ムロイ

ムロイはそう遠くない町からの転校生だった。 理由は絶対に話さなかったから、聞いたことはないし知らない。

転校生は無理して明るくふるまって馴染もうとするタイプと、 空気になって目立たないようにするタイプがいたが ムロイは特に気の毒なくらい周りを気にしているように見えた。

見えたのであれこれとおせっかいを焼いた。 おせっかいだった。 男だからかどうかはわからないが、 結局もてあましてマキタとオータニに投げた。

という顔を僕はした。 だからムロイはそんなことを言った。

いつも僕は余計なことをする。 優しい人間になりたかった。 そう思えば思うほど、ぎくしゃくした。

ムロイは「自分はコミュ障」と保険をかけてるだけで、 実際は考えてることバレバレのポンコツだった。

損得で人を値踏みような底意地の悪さがないなら、 いずれは周囲の人間に受け入れられていくだろう。

昔から僕はいつも言います。 お前がコミュ障かどうかを決めるのは僕であってお前ではない。

意地悪なのと口が悪いのとは関係がない。 弱く、優しく、善良な意地悪もたくさんある。 意地悪な人間にとっては、僕が一番意地悪に見えている。 絶対的な意地悪なんて性格は存在しない。

どんな人間だろうが 強制的に同じ空間へ縛り付けられる学校は、 自分にとっての意地悪を明確にして それを避ける訓練をする場所という意味では 最適の場所だったと思う。

大学生になって筋肉少女帯のニューアルバム「レティクル座妄想」(1994)の この曲を聴いた時、即座にムロイのことを思い出した。

筋肉少女帯「香菜、頭をよくしてあげよう」 https://www.youtube.com/watch?v=ZxBTK_Inny8

精神が好調な時は描く。 精神が不調な時も描く。

その頂点を短いスパンでいったりきたりしながら、 「普通」の時が一番描けない。

情緒不安定は飼いならさなければならない。 ずるずるとそれに引っ張られていてはいけない。