人物:枝くん

枝くんは同じ芸術学専攻の同期である。 僕は1浪、彼は2浪だったが、 のちに4浪であることが発覚した。 発覚したところでどうということもなかった。

彼とは相当長い時間を一緒に過ごしたが、 芸術や美術に関心を見せたことが一度もない。 彼が感情を見せたのは、共に留年した5年生の時、 大三元字一色のダブル役満を上がった瞬間のみである。

ずっと美術部に在籍していたが、一枚も絵は描かなかった。 氷河期の就職活動中、実家近くの火山が噴火、大学を辞めて北海道へ帰郷した。 その後、彼に会いにいった後輩が、 「枝さんは聖書を売る人になっていました」 という情報を与えたきり、行方は杳としてしれない。

あれからとうに20年が経つ。 生死も不明であるが、仲間内で集まると必ず彼の話になる。 そのたびみんなで「あいつ探そうぜ」と盛り上がるが、 誰も探さない。

僕の数少ない同性の友人である。

夏は嫌いだ。暑いのが苦手というのもあるし、 照りつける太陽の下では隠れる場所も隠す場所もない。

忘れたいことはいつも夏に起こった。 忘れたくない人はいつも夏に出会った。

君にはいますか? 忘れたくない人が。

見ての通り、誰が見ても上手な絵じゃないんです。 上手に描こうと思っていませんからね。

でもね、26年ぶりに見ると、 ファミコンとか14型のテレビとアンテナ、 粗大ゴミで拾って直したいつの時代のかわからない扇風機、 木製の汚いタンス、ゴミの山、 全てが妙に愛おしい。

これが写真だったら特に何も思わなかったと思います。 絵はよいですね。

僕はギャンブル嫌いなのでこれが最初で最後でしたが、まあ好きな人は好きにやればいいと思う。

ただそれでもイヤだったのは、人の金をあてにしてでもやろうとするところと、普段マトモなのに急に人格変わるところ。

大学時代のハセガワと枝くんが脱衣麻雀を撮影する漫画