シリーズ:ヌード

大学生活前半、僕を支配していたのは「不安」であり、 人間の不安を初めて絵画として表現したエドヴァルド=ムンクに惹かれたのも納得です。

ムンクと言えば「叫び」が有名ですが、 僕は「思春期」「マドンナ」そして「病める子」に強く影響を受けました。

痴情のもつれからピストルで指を吹き飛ばされたりなど 不安と譫妄の中で生きる、いかにも芸術家らしい人生に見えつつ、 割りと早いうちに成功して金持ちになり、国を代表する名士となり、 結局80いくつまで生きた、

その辺が常に不安と憂鬱を抱えた僕にとって救いでもありました。 一時期は実際にノルウェーに留学しようと準備していたくらいです。 僕の北方への強い憧れもムンクから来ています。

不安や憂鬱はそのまま不安や憂鬱でよく、 どうしたらそれでも破滅せずに済むのか、 そんなことを考えながら当時は毎夜ムンクの画集を眺めていました。

リンク:浅野弥衛「作品」

時々紹介していますが、故郷の作家です。 僕が大学の頃まで存命でした。

僕はずっと西洋美術にかぶれていて、 子供の頃はアングルやクールベの新古典主義や写実主義、 高校の頃になるとダリやタンギーのシュールレアリスムが好きになって、 大学に入るとパウル・クレーやカンディンスキーなどの抽象表現にハマりました。

なかでもクレーの線画が好きだったんですが、 やっぱり西洋的というかカラフル過ぎて、色はあんまり好きじゃなかった。

そんな時にノムラ先生に紹介されたのが浅野弥衛の大回顧展です。 96年に亡くなって、その年だったかな、津の三重県立美術館で開催された この作品群を見て、ああこれが今自分が欲しかった世界なんだと思いました。

どうしてもわけのわからない絵を見ると、 これは何を表していて…と考えてしまいますが、 浅野弥衛の作品てほんとう、ただの線なんですよね。 すごく楽しそうに、あるいは真剣に描かれたモノクロームの線です。

ネットの画像で見ても少しも面白くない。 キャンバスを釘でひっかいてつけた傷のような線の、 その周りにわずかなヒビが入っている様子、 ただの線を見て、ただの線の表情を楽しむ絵です。

大学の頃、技法をまるっと真似してたくさん作品を作りました。 これもそうです。 熱くも冷たくもない、硬いけど柔らかい世界。 バッハとベルクの音楽世界を足したような、そんな世界が 今も僕のベースになっています。

リンク:ベルナール・ビュフェ美術館 リンク:ベルナール・ビュフェ「ピエロ」

学生の頃、日曜美術館で見てから夢中になりましてね。 車で京都から静岡の沼津近くのビュフェ美術館まででかけて行くくらい憧れました。

「私は絵を描くことしか知らない」

かっこいいのです。 とにかく。

引用:マコンデ美術館

マコンデ美術館は三重県の鳥羽市にある、 アフリカ・タンザニアのマコンデ族に伝わる彫刻を収集した アフリカンアートの美術館です。

アフリカンアートはピカソのキュビスムに影響を与えたことでも有名ですが、 なにせ西洋美術ともアジア美術とも違う強烈な力がありましてね。 初めて美術館を訪れた時、感動なのか恐怖なのかなんだか自分でもわかりませんが 激しい感情をもったことを覚えています。

現代美術の彫刻家ブランクーシの「空間の鳥」は 美しい作品です。

引用:滋賀県立美術館「空間の鳥」

鳥というより刀みたいな形ですが、 鳥自体の姿ではなく「鳥が飛んでいるという本質自体」を表現したと 作者本人が語っています。 そう言われればそうだし、よくわからんと言われればよくわかりません。

とても好きだった滋賀県立美術館で何度も見ました。 ここはジャッドみたいなミニマルアートを収集しており、 作品の意味はともかく、シンプルな形っていいよなあと 一日中眺めても飽きませんでした。

それに比べて人体はなんて複雑な形をしていることでしょう。 まともに描けるようになる気がしません。 でもとりあえず描かないと絶対描けないので なんか違うなんか違うと独り言を言いながらまた朝を迎えます。