連作:トオイヒビ

記憶に薄ついてどうしても忘れられない小さな美しい景色を、自分が老いてしまう前に描き留めておきたくて。

制服の人物が室内で考え込む。

青春はカビのにおいがする。

僕たちは授業から逃げて物置に籠城した。別に何も起こらなかった。僕は何も期待しないことを学んだ。

人物が廊下でたばこを吸う。

じっと考えている先輩を、僕もまた向かいのベンチでじっと見ていた。

机に寄りかかる女子高生の絵。

ほこりっぽく薄暗い僕たちの教室も、春の午後には柔らかい光が窓の向こうから入ってきて、ただのほこりをキラキラとした何かに変えた。

スケッチする少女のアトリエ

絵を描く人が一番きれいに見えたのは、しゃべってる時でも笑ってる時でも悩んでる時でもなくて、やっぱり絵を描いてる時だったと僕は思う。

制服姿の少女が腕を押さえる。

シャーペンツールでちまちま夜中に描いた。