連作:トオイヒビ

記憶に薄ついてどうしても忘れられない小さな美しい景色を、自分が老いてしまう前に描き留めておきたくて。

この描き方が一番楽しいんですけど 体への負担も大きいんで悩ましいところです。

描いてる間…せいぜい3時間くらいですが、 いろんなことを思い出し、いろんなことを考えています。

言葉もたくさん頭の中で出てくるんですが、 こうしてアップした瞬間、大体忘れてしまう。

描き始める前の不安な気分、憂鬱な気分は 多分絵の中に置いてくるんだと思います。

寝食を忘れるという言葉がある。 寝るのも食べるのも忘れて没頭するという意味だけれど、 僕が10、20代で寝食を忘れたのは マキタや先輩を追っかけていたことだけ、 観察ではなく、人をじっと僕自身の目で見ていたことだけだ。

ただ描いている、 今のこの寝食の忘れ方を高校生あるいは大学生の頃に 勉強や趣味に発揮できていたら 世界は変わったかもしれない。

いや、きっと変わらないだろう。 僕に絵を描かせているのは そのただ無為に人を追いかけ回した思い出だから。

「迷う」とか「諦める」みたいな単語は僕にとって重要なんだけど、 多分ねえ、幼いとか未成熟とかそういうのは嫌いなんだよ。 描いてるうちに気がついた。

自分では長い間こう、言葉は悪いがメンヘラっぽいものが好きなのかと 思ってましたが、それを越えたところにある諦観とか老成に 強い魅力を感じるのでやっぱり大人が好きだったんだな。