盆地である京都の暑さ寒さは厳しく、 築何十年だか誰もわからないこの建物は あらゆる室内に隙間風が吹いており、とてもじゃないが 絵なんか描いてられる環境ではない。

アトリエは火気厳禁であることもそれに拍車をかける。 広大なアトリエにたった一つ、小さなストーブだけがあった。

真冬の制作は、日中だけにするか、 この小さなストーブでなんとかだましだまし暖を取るかの二択だ。

いきおい、ストーブの近くで話をする機会が増える。 いろりを囲んで昔話をするようなものだ。

自分たちで作った木の長椅子の端と端に座って、 背中合わせに話をしたりしなかったりする。

物音はしない。 時々ライターのカチッという音だけが背中越しに聞こえてくる。

僕はそんな時間が好きだった。 そんな時間を美しいと思った。