扇風機の前に立つ女性キャラ

学校に冷房なんてなかった。扇風機もなかったし、下敷きであおいでなんとかする以外の対策はなく、ゆえにノートに使う下敷きと、あおぐ用のあおぎやすい硬さの下敷きを持っていた。

うちわとか扇子を持ってるやつなんかいなかった。なんでだろう。校則で禁止だったのかもしれないし、一人だけそんなの持って目立つのが田舎の公立高校ではできない空気だったのかもしれない。

美術準備室には冷房が、美術室には扇風機があった。油絵を速く乾かすためという名目だったが、他の部からは羨ましがられた。

僕は扇風機あるぜ冷房あるぜソファあるぜ、僕は部長だからいつでも使わせてあげるぜ、と明言してたわけではないが、そんな雰囲気を出してマキタが3階の演劇部室から4階の美術室に毎日遊びに来ないかなーと考えていた。

なんでこう、普通に仲良くなろうとするんじゃなくてそんなモノや金で釣るような考え方だったんだろう。

自信がなかったんだよね。今も僕の中にはそんな姑息な部分が元気に息づいている。

マキタはいつも無駄に走り回っていたから、時々美術室にやってきては上着を半分脱いで扇風機にあたっていた。そしてよく通る高い、でも小さな声で

あ”ー

と宇宙人みたいな声真似をするのを僕は背後で聞いていた。

僕たちはまだ子どもだった。そんな夏は幸せだったと思う。