旅は好きだった。 旅の目的は、何かを見ることではなく、何も見ないことだった。 自分を知っている人間がいないというだけで、 僕の心ははずんだ。

やがて、誰かと旅をすることを覚えた。 それは何かを見る旅だった。 目的を達するための旅だった。 僕は次第に疲弊した。

奥崎の実家に挨拶に行った。 目的は達した。

僕は君のことを知りたいと思った。 雪が降り出した。

君は君しか知らないことをたくさん話した。 僕は、そうやって人を好きになる。